2018年9月の記事一覧
第43回東北・北海道地区高等学校理数科教育研究協議会に参加しました
第43回東北・北海道地区高等学校理数科教育研究協議会に参加しました。
9月11日(火)・12日(水)に山形県山形市で行われた第43回東北・北海道地区高等学校理数科教育研究協議会に校長 井関和明、教諭 石川淳一(数学)、佐藤伸郎(理科)の3名が参加しました。研究主題は「『科学する心』の育成 ~自ら課題を発見し、主体的・協同的に探究する力の育成を目指して~」です。
東北・北海道で理数科・探究科がある高校28校87名が参加する予定でしたが、北海道地震の影響で4名の先生方が参加できませんでした。福島県から本校の他に相馬、白河、須賀川桐陽の4校が参加しました。
<1日目>
〇 開会式
秋田県立秋田高等学校 安田浩幸 校長から※1STEM教育の重要性、山形県立山形南高等学校 大沼 敏美 校長から※2society5.0について話がありました。
※1 STEM教育・・・Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を重視した教育方針。理工系に限らず、AIを使いこなす能力として注目されている。
※2 society5.0・・・狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会。
〇 講演
「世界遺産ペルー、ナスカの地上絵の謎を探る」
山形大学名誉教授 阿子島 功
・ナスカの地上絵とはなにか。
・地上絵が1500年間以上も消えなかったのはなぜか。
阿子島先生は、活断層や地すべり、洪水などの地形変化を災害考古学と協働して調べて、防災図に反映させることを主な研究にしています。国内のほか、モンゴル、中国西部、ペルーなど乾燥・半乾燥地の考古学遺跡の自然環境調査に参加しました。
〇 分科会(理科部会)
発表1 「本校の理数科『課題研究』の取組について」
青森県立五所川高等学校 教諭 船越信之
・つくば・東京へ研修に行っている。
・勉強合宿では1・2年生合同授業を行っている。
・課題研究では、ステージ発表とポスターセッションを行う。
・先行実験が少なく、主体的で深い学びができるテーマを選ばせる。
・スマホ録画による動画での検証を行う。
発表2 「ICTを活用した課題研究」
岩手県立盛岡第一高等学校 教諭 細川純平
・Youtubeで物理の授業を公開している。
・課題研究テーマごとの掲示板を利活用している。
・課題研究ノートの写真をUPして共有している。
・岩手大学の先生からも投稿してもらう。
・※3eポートフォリオへの移行を模索している。
※3 eポートフォリオ・・・レポートや授業のメモ、プリント、教員や友人のコメント、部活動など、生徒の「学び」に関わる記録をデジタル化して残すシステム。テストでは測れない生徒の能力や成長を評価できる
指導助言
宮城県立多賀城高等学校 校長 佐々木 克敬
福島県立白河高等学校 校長 田中 誠
・形成的評価(探究活動の途上で,その活動が所期の目的を達成しつつあるかどうか,どのような点で活動計画の修正が必要であるかを知るための評価)をする。
・課題研究は安心して失敗できる場である。
・リスクを整理し、スマホを積極的に導入する。
・異学年合同授業は、同一課題の系統性につながる。
・覚えた知識を研究により経験できるのが、理数科の強みである。
<2日目>
〇 全体会(総合部会)
発表1 「宮城県仙台三高における英語科としてのSSHの取組について」
宮城県仙台第三高等学校 教諭 笠間 貴之
・SSH(スーパーグローバルハイスクール)に指定されている。
・英語で科学用語を習得し、英語でプレゼンテーションやディベートをする。
・実験をしながらプレゼンテーションする。
・台湾の姉妹校の生徒や学校内の留学生を相手に英語を使って授業をする※4CLIL教育が行われている。
※4CLIL教育(Content and Language Integrated Learning:内容言語統合型学習)
教科のコンテンツ理解と言葉の習得を統合した学習。生徒が興味を持っている教科分野を英語で学ぶことで、新しい知識の獲得と語学習得を同時に実現できる。
発表2 「本校数理科学科の現状と課題」
福島県立福島西高等学校 教諭 石川 淳一
・数理科学科が2019年度を最後に廃止となる。
・女子バスケットボール部、体操部、囲碁部が全国大会に出場している。
・数理哲人(受験予備校講師)による出張講座や1日大学などの特徴的な行事がある。
・福島大学の教授と協働して、課題研究を進める。
・すべて生徒主体のテーマ設定。とてもユニークなテーマもあった。
・今後も理化学研究所等を訪問して、教科書を超えた内容に触れることで、生徒がより関心を持ったテーマが出されるだろう。
・数理科学科が廃止された後も課題研究の取組をどのように普通科につなげていくかが課題である。
指導助言
青森県立五所川原高等学校 校長 中村 佐
・英語を系統立てすれば、3年間を通して、数学・理科を題材に英語を学ばせることができる。
・PCのスキルなどのICT技術を、生徒から教員に教えてもらうと両者にメリットがある。
・通常の授業のなかで、他教科の教員の力を借りて教科横断的な内容をすることが、対話的で深い学びにつながる。
〇 閉会式
講評
秋田県立秋田高等学校 校長 安田 浩幸
・科学の発展でさらに様々な事象の解明が進む。
・科学的な指導への工夫、視点、仕組み、きっかけを作る。
・生徒が自ら探究の課題を見つけることが一番大切である。
山形県でも山形東高校で普通科2学級を探究科に改編、米沢興譲館高校が普通科1学級・理数科を探究科に改編するなど、全国的にグローバル課題を解決し、社会の変化に柔軟に対応できる思考力・判断力・表現力を身につけ、大学入試制度改革に対応するための探究科の創設が始まっています。探究する(科学する)心を育成する本教育研究協議会の果たす役割が、今後ますます大きくなると感じる2日間でした。